不倫慰謝料請求の進め方・流れと高額な慰謝料を払わせるためのポイント

夫や妻に不倫されて、悩んだけれど不倫相手に慰謝料請求しようと決意しても、「どのようにして慰謝料請求を進めたら良いか」よくわからないのではないでしょうか?

不倫の慰謝料請求をするときにはしっかり準備を行い、適切な方法で進めていく必要があります。
不倫相手から反論される可能性も高いので、「払わない」などと言われたときの対処方法も知っておきましょう。

今回は不倫慰謝料請求の進め方の流れとなるべく高額な慰謝料を払わせるためのポイントを解説していきます。

不倫慰謝料請求の流れは?

不倫慰謝料請求の大まかな流れは以下の通りです。

  1. 不倫の証拠を集める
  2. 内容証明郵便で慰謝料の請求書を送る
  3. 交渉する
  4. 合意ができたら合意書を作成する
  5. 合意書を公正証書にする
  6. 支払いを受けて解決する

それぞれのステップについて詳しくみていきましょう。

不倫の証拠を集める

不倫で慰謝料請求をするためには、まずは不倫の「証拠」を集める必要があります。

証拠なしにいきなり相手に慰謝料請求をしても「不倫していない」としらを切られたら追求できなくなるからです。綿密な証拠を入手して相手が否定できない状況を整えてから慰謝料請求を開始しましょう。

不倫の証拠としては「肉体関係を立証できるもの」が必要です。
LINEやメール、写真などはよく証拠に使われますが、それだけでは肉体関係を証明できず効果が足りないケースも多々あります。
ご自身では証拠を揃えにくい場合、探偵事務所に依頼して相手の浮気の現場を押さえたら確実な肉体関係の証拠を入手できますので、気軽に相談してみましょう。

内容証明郵便で慰謝料の請求書を送る

不倫相手の確実な性関係の証拠が揃ったら、いよいよ不倫相手に慰謝料の請求をします。

慰謝料請求の方法はいくつかありますが、やはりインパクトの強い内容証明郵便で慰謝料の請求書を送るようお勧めします。

夫のスマホなどでメールやLINEを発見し、そこから相手に連絡する方もおられますが、メールやLINEでは相手が軽く受け止めたり無視したりする可能性もあるのであまりお勧めできません。

相手の住所や氏名の調べ方

内容証明郵便を送るには、相手の氏名と住所を特定する必要があります。わかっていれば良いのですが、不明な場合には調べなければなりません。

不倫相手の電話番号やメールアドレスがわかればそこから契約者情報(氏名、住所)を調べられる可能性があります。

ただしこうした情報は個人情報なので、調べるには弁護士の力が必要です。
もしくは探偵に尾行調査を依頼すれば相手の居住場所や氏名、勤務先などを突き止められるケースもあります。

自分で対応するのに限界があれば、一人で悩まず専門家の力を頼ってください。

2種類の内容証明郵便の使い方

内容証明郵便は、紙ベースで文書を作成して郵便局から発送する方法とネット上で発送する方法があります。

紙ベースで作成する場合、まったく同じ内容の文書を3通作成して記名押印し、内容証明郵便の取扱いのある郵便局に営業時間内に持ち込む必要があります。
電子内容証明郵便なら、ネット上で24時間発送可能です。

普段お仕事などで忙しくネットの扱いに慣れている方であれば、ネットで発送できる電子内容証明郵便が便利です。

料金はほとんど変わりません。

内容証明郵便に記載すべきこと、書式例(テンプレート)

内容証明郵便には、以下のような記載をしましょう。一例として書式をご紹介します。

2020年○月○日

東京都○○区○○町○丁目○番○号
○○○○様

東京都××区××町×丁目×番×号
××××印

ご請求

前略
私は、△△△△の妻ですが、貴女は△△△△が既婚であると知りながら、2018年○月頃から現在までの間、○○に旅行にでかけたり○○のホテルを利用したりして、不貞関係を継続してきました。
貴女の行為は不貞行為として不法行為(民法709条)を構成し、これによって私は多大な精神的苦痛を受けております。これにより私の受けた精神的苦痛を金銭的に評価すると300万円を下りません。

そこで私は本書をもって貴女に対し300万円の慰謝料を請求いたしますので、本書面到達後1週間以内に下記金融機関へ振り込む方法によって、お支払いください。

草々

○○銀行○○支店普通預金口座番号○○○○○○○口座名義人××××

上記はかなり簡単なものです。

実際に送付する際には相手とあなたの配偶者の不貞行為の内容について上記より詳しく書いてかまいません。ただし相手を感情的に責める言葉は書かない方が良いです。

相手を責めると相手が頑なになって「慰謝料を払わない」などと言い出すおそれが高まるためです。

交渉する

相手に内容証明郵便を送っても、請求通りに相手が200万、300万円のすんなり慰謝料を振り込んでくるケースはほとんどありません。たいていは交渉が必要となります。

相手から予想される反論について

交渉の際、相手は「不倫していない」と主張したり「お金がないから支払わない」と言ったり「あなたに悪いところがあったからご主人が不倫した」「慰謝料が相場に対して高すぎるから払わない」などと述べて支払を拒絶したりするケースが多々あります。

そこで相手の言い分に応じてこちら側も適切な反論や対応が必要となります。

たとえば相手が不倫を否定したら、用意しておいた証拠を示して反論を封じます。

相手が「お金がない」と言う場合、本当に収入や資産がないか確認して、本当に支払えない場合には減額や分割払いの話し合いをします。相手が「私は悪くない」などと開き直るケースでは、裁判も検討しなければなりません。

「相場より高すぎる」と主張された場合、本当に相場より高ければ相場までは減額すべきですが、相場通りなら減額の必要はありません。

慰謝料の交渉のポイント

慰謝料請求

慰謝料の交渉を進める際、基本的には「なるべく高い金額を払わせて示談で終わらせる」ことを目標にしましょう。不倫慰謝料の金額の相場は100~300万円程度です。

事案にもよりますが、200万円以上を一括で支払われるなら示談しても損にはならないケースが多いでしょう。

100万円やそれ以下の減額を主張されるなら訴訟を検討したケースが多数です。
ただし相手に資力がない場合に訴訟を起こしても無駄骨になるので、減額と分割払いを認めて支払える範囲で支払わせた方が得になります。

分割払いを認めるなら「期限の利益喪失約款」をつける

分割払いを認めるときには、必ず「期限の利益喪失約款」を入れるべきです。

これは「数回分以上分割払いを滞納したらそのときの残金を一括払いしなければならない」とするペナルティ条項です。期限の利益喪失約款がないと、相手が遅延しても分割払いの期間が到来した分しか請求できず、あなたが不利益を受けてしまいます。

「2回分以上滞納したらそのときの残金を全額払わないといけない」内容にしておくと良いでしょう。

合意ができたら合意書(示談書)を作成する

慰謝料について不倫相手と話し合い、合意ができたら必ず合意書(示談書)を作成しましょう。口約束のままにしておくと、約束した慰謝料が払われないリスクが高まります。

合意書に記載すべきことや、テンプレート

合意書には、以下の内容を記載します。まず以下の内容は必須です。

  • 慰謝料の金額と、相手が支払い義務を認めること
  • 慰謝料の支払方法(一括か分割かなど)
  • 入金先の口座番号
  • 慰謝料の支払期限
  • 分割払いなら期限の利益喪失約款
  • 本件で定めた慰謝料以外にお互いに債権債務がないこと

必要に応じて以下のような内容も記入すると良いでしょう。

  • 本件の不倫トラブルについて第三者に口外しないこと
  • 相手があなたに謝罪すること
  • 相手があなたの夫や妻と接触しない(関係を断つ)こと

次に慰謝料支払いの合意書の書式を示します。
こちらは一例ですので、ケースに応じて書き換えつつ使ってみてください。

不倫慰謝料支払いに関する合意書

××××(以下「甲」という)及び○○○○(以下「乙」という)は、乙と甲の夫△△△△との不貞にもとづく慰謝料の支払いにつき(以下「本件」という)、本日以下の通り合意する。

  1. 乙は甲に対し、本件についての不貞慰謝料として金200万円の支払義務があることを認める。
  2. 乙は甲に対し第1項記載の慰謝料を下記のとおり分割して、甲が指定する銀行口座宛てに振り込んで支払う。振込手数料は乙の負担とする。
    2020年○月○日から2022年○月○日まで毎月末日限り10万円ずつ20回払い【振込先の口座】
    ○○銀行○○支店普通預金○○○○○○○口座名義人××××
  3. 乙が前項の支払いを2回以上遅滞した場合には、そのときに残っている残金と遅延損害金を一括にて支払う。
  4. 甲及び乙は本件不倫トラブルについて第三者に一切口外しないことを約束する
  5. 甲と乙との間には,本示談書に定めるもののほか,何らの債権債務関係がないことを相互に確認する。

2020年○月○日

甲(住所)
(氏名)

乙(住所)
(氏名)

合意書を公正証書にする

特に慰謝料を分割払いにしたときに重要となりますが、慰謝料支払いの合意書を公正証書にすると安心感が高まります。

公正証書と公正証書に認められる効力

公正証書とは、公務員の1種である公証人が作成する公文書で、民間人が作成した一般の契約書や合意書を公正証書にすると、より高い効力が認められます。

慰謝料支払いの合意書を公正証書にすると、相手が約束通りの支払いをしなかったときにすぐに「差押え」ができます。差押えの対象になるのは相手の預貯金や給料、生命保険や不動産、株式などの財産です。

公正証書がなかったら、相手が不払いを起こしたときに別途損害賠償請求訴訟を起こして判決を出してもらわないと差押えができません。手間と労力、時間を省くためにも、合意時に公正証書にしておくのがお勧めです。

分割払いのケースでは公正証書化が必須ですが、一括払いの場合でも支払時期が先になるケースなど支払いに不安がある場合、公正証書を作成しましょう。

公正証書の作成方法

公正証書を作成するには、全国のどこかの公証役場に申込みをする必要があります。

参考 公証役場一覧日本公証人連合会

その上で公証人と日程を調整し、あなたと相手が決められた日に公証役場に行って署名押印すれば公正証書が完成します。

公正証書の原本は公証役場で保管されるので、万一紛失しても写し(謄本)を発行してもらえます。

ただし公正証書の作成は不倫相手に強要できません。まずは相手に公正証書について説明し、説得して公正証書の作成に応じさせる必要があります。

また公正証書の作成には費用が発生します。慰謝料の金額にもよりますが1万円前後です。相手に公正証書作成に応じさせるには、こちらが負担した方がスムーズです。

支払いを受けて解決する

このように示談を成立させて合意書を作成し、支払いを受ければ不倫慰謝料問題が解決されます。

示談によって解決できなかった不倫慰謝料請求は?

示談によっては解決できなかった場合の不倫慰謝料請求の流れをみていきましょう。

もしも交渉をしても合意できない場合、以下の流れとなります。

  1. 損害賠償訴訟を起こす
  2. 判決が出る
  3. 差し押さえをする

損害賠償訴訟を起こす

相手が慰謝料を支払わない場合や慰謝料の金額について合意できない場合、裁判所で損害賠償請求訴訟を起こす必要があります。

訴訟で相手の不貞を立証できれば、裁判所が相手に慰謝料の支払い命令を出してくれます。

ただし訴訟で勝つには不貞の確実な証拠が必要です。そのためにも、不倫の慰謝料請求前にしっかり証拠を集めておく必要があります。

また訴訟は専門的な手続きなので、素人が対応するのは困難です。弁護士に任せる必要があるでしょう。

弁護士に依頼すると当然弁護士費用がかかるので、費用対効果を考えなければなりません。

相手がある程度「払う」と言っている場合やまったく支払い能力がなさそうな場合には、裁判をすると損になってしまう可能性があるので注意しましょう。

判決が出る

訴訟を起こしてきちんと不貞関係を主張・立証できたら裁判所が相手に支払い命令の判決を下します。判決では必ず一括払いとなり、分割払いは認められません。相手もあなたも控訴しなければ言い渡し後2週間で判決が確定します。

差し押さえをする

判決が出たら、相手に連絡を入れて判決通りの支払いをするように求めます。
そこで相手がきちんと支払えば、慰謝料の支払を受けられます。

もしも相手が判決に従わない場合、こちらから相手の給料や資産を差し押さえる必要があります。差押え対象の資産はこちらが特定しなければなりません。相手の勤務先や取引している金融機関、生命保険などを把握しているとスムーズに差押えを進められます。

なるべく高額な慰謝料を払わせるためのポイント

不倫相手になるべく高額な慰謝料を払わせるには、証拠集め、慰謝料の相場を把握すること。この2つのポイントが大切です。

不倫慰謝料を払わせるには、事前の証拠集めが必要です。証拠がなかったら相手も支払いに応じにくいですし、訴訟をしても負けてしまう可能性が高まります。

自分では有効な証拠を集められない場合には探偵事務所に依頼して証拠を集めておく方が良いでしょう。

また探偵事務所に依頼すると、相手の氏名や住所、勤務先を特定できるケースも多々あります。こうした情報があると請求時にも役立ちますし、差押えの際にも有効です。

不倫慰謝料の時効に要注意

不倫慰謝料には「時効」が適用されるので要注意です。不倫してから長い期間が経過したら、慰謝料請求権が時効消滅して請求できなくなってしまいます。

改正前の民法では慰謝料の時効期間は「不倫の事実と不倫相手を知ってから3年」です。

2020年4月1日以降は民法改正により、その後の不倫のケースでは「不倫の事実と不倫相手を知ってから5年」に時効期間が延びます。

時効のカウントを開始する時期は「不倫の事実と不倫相手を知ったとき」なので、不倫に気づいていなかった期間や不倫相手を特定できなかった期間は時効期間がカウントされません。

相手が「不倫していた時期から3年(5年)が経過したから慰謝料は時効で消滅した」と主張しても、あなたが不倫や不倫相手を知らなかったら慰謝料が時効にかかっていない可能性があります。

時効の主張をされたときの判断に自信がない場合にも、専門知識を持った弁護士に相談するようお勧めします。

慰謝料請求を弁護士に依頼するかどうかの判断

不倫の慰謝料請求は、弁護士に依頼すると有利に進められる可能性が高くなります。

訴訟だけではなく内容証明郵便の作成・発送や示談交渉も弁護士に任せられます。弁護士に依頼した場合、自分で話をしなくて良いのでストレスもずいぶん軽減されるでしょう。

ただし弁護士に依頼すると弁護士費用が発生します。

思ったより慰謝料が安くなった場合、弁護士費用の分足が出てしまう可能性もあるので、依頼するかどうかは慎重に検討すべきです。

相手に資産や収入があってほぼ確実に一定以上の慰謝料を獲得できるケースなどでは弁護士に依頼するとよいでしょう。それ以外はケースバイケースなので、迷ったら一度無料相談などを受けて判断してみてください。

最後に

不倫慰謝料請求では証拠集めがポイントです。自分で肉体関係に関する証拠を集められない場合、探偵事務所を上手に利用すると良いでしょう。
探偵事務所は費用や対応が千差万別なので、良い業者を選ぶことが重要です。

今回の記事を参考に、スムーズに請求を進めて高額な慰謝料を獲得してください。