夫や妻に不倫されたら大変なショックを受けますよね。不倫相手を許せないから「慰謝料請求したい」と考える方が多いです。ただ、やみくもに請求しても、慰謝料を支払ってもらえるとは限りません。今回は、不倫の慰謝料相場や請求方法、請求する際の注意点について解説します。
不倫の慰謝料相場はどのくらい?
配偶者に不倫されたときには、配偶者や不倫相手に慰謝料請求することができます。法律上、不倫のことを「不貞」と言いますが、不貞は違法行為ですし、裁判上の離婚原因にもなっています。夫や妻に不倫されたときには、慰謝料請求だけではなく、夫や妻に裁判を起こして離婚することもできるということです。
実際に不倫の慰謝料相場はどのくらいになっているのでしょうか?ケースによっても大きく変わりますが、ざっくり言うと50~300万円程度になります。以下で、どのようなケースで慰謝料が上がり、または下がるのか説明します。
婚姻期間
不倫の慰謝料相場に大きな影響を及ぼすのが、夫婦の婚姻期間です。一般的には婚姻期間が長いほど慰謝料が高額になります。
婚姻年数が10年以上の夫婦が不倫によって離婚したら慰謝料は300万円以上になる可能性が高くなりますが、婚姻年数が1~3年未満だと慰謝料は150万円程度までにしかなりません。
夫婦が離婚するかどうか
不倫によって夫婦が離婚するかどうかも大きなポイントです。離婚した場合には慰謝料は高額になり、300万円やそれ以上になる可能性も出てきます。
これに対し離婚しない場合には慰謝料は低額になりますし、夫婦関係を修復できた場合には、慰謝料は100万円を切ることが多くなります。
子どもがいるかどうか、子どもの人数
慰謝料は、子どもがいる夫婦の方が高額になります。夫婦が不倫問題で離婚すると子どもに対する影響も大きくなるからです。子どもの人数が多いと慰謝料はより高くなる傾向があります。
不貞の態様が悪質かどうか
不貞(不倫)がどのような態様で行われていたかも慰謝料の金額に影響します。たとえば毎日会っていた場合、家事育児を放棄して深夜などに家を出て不倫相手と会っていた場合、休日家族と過ごさなくなった場合、不倫相手の家で同棲してしまった場合などには悪質なので慰謝料が高額になります。
これに対し、不倫相手と会うのは月1回程度であった場合、家族サービスも変わらず行っていた場合などには慰謝料は下がります。
不倫した側の収入や社会的地位が高いかどうか
不倫した配偶者や不倫相手の収入が高額なケースや社会的地位が高い場合には、慰謝料は高額になります。収入が高い人の場合、慰謝料が高額でないとペナルティになりませんし、社会的地位が高いなら、不倫などしない分別を持つべきと判断されるからです。
不倫された側が失職したかどうか
不倫された側が仕事を続けられなくなって退職した場合には慰謝料が増額される傾向にあります。
不倫された側が精神障害となったかどうか
不倫された側がうつ病などの精神疾患になると、慰謝料は増額される傾向にあります。
以上のように、不倫の慰謝料はさまざまな事情によって異なってきます。
慰謝料請求できる場合とできない場合とは?
次に、慰謝料請求できる場合とできない場合が、それぞれどのようなものか見ていきましょう。
慰謝料請求できる場合
まずは、不倫の慰謝料請求をするための要件を確認します。
配偶者と相手に性関係がある
不倫で慰謝料請求するためには、配偶者と相手の異性との間に「性関係」があることが必要です。お互いに好意を抱いていたりデートしたりしていても、性関係がないと「不貞」にならないので、慰謝料請求はできないか、できるとしても非常に安い金額になってしまいます。
肉体関係の証拠がある
慰謝料請求するためには、不倫の「証拠」が必要です。証拠がないのに慰謝料請求をしても、相手から「不倫なんてしていない」と反論されてしまうからです。
不倫の証拠になるのは、以下のようなものです。
- メールやLINEのメッセージ
- 通話履歴
- ブログやSNSの内容
- 手帳やスケジュール帳の内容
- デートの際に使った費用の領収証
- 相手の家などに行ったときの交通ICカードの記録
- ホテルや旅館の領収証
- 探偵の調査報告書
上記の中でも「肉体関係を直接証明できるもの」がより強い証拠です。
たとえば同じ写真であっても、普通にデート中に2人で写した写真などは証明力が弱く、性交渉の最中にふざけて写したお互いが裸の写真などは証明力が強いです。
慰謝料請求できない場合
慰謝料請求できない場合をみていきましょう。
性関係がない
これは先ほどと反対の内容になりますが、配偶者と浮気相手に性関係がなかったら慰謝料請求はできません。たとえ二人が仲良くデートしていたりキスをしていたりしても、それだけでは慰謝料は認められにくいので注意しましょう。
性関係の証拠がない
現実に配偶者や相手が不倫をしているとしても、証拠がないと慰謝料請求は難しくなります。相手が不倫を否定したらそれ以上追及することが困難になりますし、証拠がなかったら裁判を起こしても負けてしまうからです。
すでに充分な慰謝料を受け取っている
不倫の確証をつかんでいても、慰謝料請求できないケースがあります。それは、配偶者からすでに充分な慰謝料が支払われている場合です。
不倫の慰謝料は、配偶者と不倫相手の「連帯債務」となります。
連帯債務とは、複数の債務者が同じだけの責任を負うタイプの負債です。
連帯債務の場合、債務者はどちらも債務全額を支払わなければなりません。ただ、負債が2倍になるわけではないので、どちらかから全額の支払いを受けたら、それ以上は請求できなくなります。
たとえば夫が不倫したケースで、慰謝料が300万円発生しているとします。このとき、夫と離婚する際に、夫から400万円支払いを受けたとしましょう。すると、その400万円の中には不倫慰謝料が全額含まれていると評価されるので、それ以上不倫相手の女性には請求できなくなります。
不倫相手への慰謝料請求前に配偶者と離婚するときには、離婚慰謝料の設定にも注意が必要です。
時効が完成している
不倫の慰謝料請求権には「時効」があるので、時効が成立してしまったら、もはや慰謝料請求はできません。
不倫慰謝料は、不倫の事実と不倫相手の素性を知ってから3年間で消滅します。そこで、不倫されてもすぐに慰謝料請求をせずに3年以上放置していると、慰謝料請求できなくなってしまう可能性があります。
不倫が発覚したら、すぐに慰謝料請求するかどうかを決断して、請求するなら早めに動くことが重要です。
相手が性交渉に合意していない
相手が配偶者との性交渉に合意していないケースでも、慰謝料請求はできません。不倫が不法行為になるためには、相手に「故意」や「過失」が必要だからです。
合意なしに無理に性行為を強要された場合には、相手に故意も過失も認められないので慰謝料は発生しません。むしろ性交渉を強要した夫が相手から訴えられる可能性があります。
既婚者であると知らなかった
不倫相手があなたの配偶者のことを「未婚」と思い込んでいたときには、慰謝料が発生しない可能性があります。たとえばあなたの夫が言葉巧みに相手女性をだましており、その言葉を信じてもやむを得ない状況であった場合には、相手に故意も過失もないので慰謝料が発生しません。
ただし、夫が「僕は独身」と言っていても、客観的に「既婚ではないか?」と当然気づくべき状況であった場合には、相手に過失があるので慰謝料が発生します。
不倫慰謝料の請求方法
不倫慰謝料を請求するときには、次のような手順で進めましょう。
内容証明郵便で慰謝料請求書を送る
不倫慰謝料を請求するとき、まずは証拠を集める必要があります。証拠が揃ったら「内容証明郵便」で慰謝料の請求書を送りましょう。
内容証明郵便を使うと確実に慰謝料請求をした証拠を残せますし、相手に強いプレッシャーを与えることも可能です。
請求書には、相手方らが不倫している事実、請求する慰謝料の金額や支払期限、支払方法、支払がない場合には訴訟を起こす予定があることなどを書いておきましょう。
話し合いをする
内容証明郵便を送ったら、相手との間で慰謝料についての話合いをします。合意ができたら合意書を作成し、その内容に従って慰謝料を支払ってもらいます。
訴訟をする
相手と話し合っても合意できない場合には、訴訟によって相手を追及する必要があります。裁判できっちり不貞(性関係)を立証できたら、裁判所が相手に慰謝料の支払命令を出してくれますし、相手が判決に従わない場合には、相手の預貯金や車、不動産や給料などを差し押さえて慰謝料を回収することも可能です。
慰謝料請求するときの注意点
不倫相手に慰謝料請求するときには、以下のようなことに注意しましょう。
名誉毀損に注意
配偶者に不倫をされると、非常に腹が立ちますし、相手のことを悪く言ってやりたいと思うものです。職場不倫している場合などには、会社中に不倫の事実を広めたいと考えてしまうこともあるでしょう。
しかしそのようなことをすると、あなたが「名誉毀損」と言われてしまう可能性もあります。また、過度に相手のプライバシーを侵すと「プライバシー権侵害」だと言われてこちらが慰謝料請求されてしまうおそれもあります。
会社に不倫の事実を伝えても相手を解雇してもらえるわけではないので、会社に押し掛けたり不審な電話をかけたりするのはやめましょう。
脅迫に注意
不倫相手に慰謝料を払わせたいと思ったとき、相手に強い勢いで迫ってしまう方もおられます。ときには親族や友人に手伝ってもらって相手を取り囲み「浮気の自認書や謝罪文に署名しないと帰さない」「今すぐ慰謝料を払え」「サラ金で借りてでも支払え」などと言って脅迫するケースもあります。
しかし、このようにして無理矢理書かせた自認書は無効ですし、脅迫罪や強要罪が成立する可能性もあります。また、脅迫して無理に慰謝料を払わせたら恐喝罪になってしまいます。
相手に慰謝料請求をするときには、法的に許された方法で行う必要がありますので、不倫で慰謝料請求するときには、いろいろな点に注意が必要です。対応に困ったときには、一人で悩まず弁護士などの専門家に相談するのが良いでしょう。