離婚をする際は、今後のトラブルを回避するためにあらかじめ決めておくべきことがいくつかあります。
離婚後、双方が新しい生活を始めるために必要な手続きに関わってくるため、取り決め漏れがないよう注意しましょう。
ここでは、離婚後の戸籍や慰謝料、財産分与などの離婚条件について解説します。
- 離婚前に決めておくべきこと
- 慰謝料請求の進め方
- 財産分与の考え方
離婚前に決めておくべきこと
離婚は離婚届を提出すれば全てが終わるわけではありません。戸籍や財産分与、年金分割など、さまざまな手続きが必要です。
また、慰謝料を請求する場合の手続きや金額、子供がいる場合の養育費・親権など、状況によって決めておくべきことも増えていきます。
以下で詳しく説明します。
離婚後の戸籍はどうするのか
原則として、離婚後は夫婦のうち筆頭者の側が戸籍に残る一方で、筆頭者でない側は婚姻前の戸籍に戻ることになります(=復籍)。
もし婚姻中にもともとの親の戸籍が、離婚や結婚により別の戸籍へ移動している場合は、その移動先の戸籍に入ることとなります。
これに対して、元の戸籍から全員が除籍になっている場合や、離婚後も婚姻中に使用していた氏を称する場合は、新たな戸籍を作る必要があります。
この場合は「新戸籍編製の申し出」を行いましょう。
前述したように、離婚届の「婚姻前の氏にもどる者の本籍」欄の新しい戸籍をつくるにチェックを入れます。
離婚後も婚姻中に使用していた氏を称する場合については、離婚の際に称していた氏を称する届も提出しましょう。
慰謝料はどうするのか
離婚慰謝料とは、離婚による精神的な苦痛を慰める目的で支払われる賠償金です。離婚に至る原因を創り出した者(=有責配偶者)から、配偶者に支払われます。
慰謝料の概要
慰謝料は、不貞行為やDV・モラハラ、悪意の遺棄などがあった場合に請求できます。
悪意の遺棄とは、合理的な理由なく生活費を渡さない、家から追い出す、無断で別居するなどの行為を指します。
一方、慰謝料を請求できない場合もあります。
たとえば性格の不一致を理由に離婚する場合や、離婚について互いに責任がある場合などには慰謝料を請求できません。
慰謝料請求の進め方
離婚慰謝料の金額等は、他の離婚条件と同様に離婚協議で取り決めるのが原則です。
夫婦間で慰謝料の金額等について合意したら、その内容をまとめた離婚協議書を締結しましょう。
公正証書で締結すれば、不払いとなった際にはスムーズに強制執行を申し立てることができます。
離婚協議がまとまらない場合は離婚調停、離婚調停が不成立となった場合は離婚裁判によって慰謝料の金額が決まります。
財産分与はどうするのか
財産分与は、夫婦で協力して築いた財産を、離婚に際して公平に分割することをいいます。
財産分与の考え方
財産分与には3つの考え方があります。
清算的財産分与を中心としつつ、具体的な事情に応じて扶養的財産分与や慰謝料的財産分与を加味するのが一般的です。
清算的財産分与 |
夫婦で協力して得た共有財産を、それぞれの貢献度に応じて公平に分割する考え方です。離婚原因を問わず「2人の財産を公平に分ける」という考え方であるため、離婚原因を作った有責配偶者側からの財産分与請求も認められます。特段の事情がない限り、清算的財産分与の割合は1対1(半分ずつ)です。 |
扶養的財産分与 |
離婚すると夫婦の片方が生活に困窮してしまう場合に、生活費等を支援するために財産を分与するという考え方です。経済力の高い側が配偶者に対し、離婚後の扶養を目的として、一定額を定期的に支払うことがあります。 |
慰謝料的財産分与 |
有責配偶者が配偶者に対して、慰謝料の一部として財産分与を行うという考え方です。慰謝料と財産分与を区別せずに、まとめて財産分与を行う場合は慰謝料的財産分与の考え方が反映されます。 |
財産分与の進め方
財産分与も慰謝料と同様に、まず離婚協議で話し合い、まとまらなければ離婚調停や離婚裁判へ移行します。
財産分与を行う際には、対象財産を漏れなく把握することが重要です。
配偶者が財産を隠していると思われる場合は、財産調査等について弁護士に相談しましょう。
年金分割はどうするのか
年金分割とは、婚姻中における厚生年金保険の加入記録を離婚時に分割する制度です。
配偶者よりも収入が少ない場合や、専業主婦・主夫の場合には、年金分割を請求すれば、将来受け取れる年金が増えることがあります。
なお、年金分割は離婚によっては自動的に行われず、日本年金機構に請求する必要があります。
年金分割の請求期限は原則として、離婚の翌日から2年間となりますので注意しましょう。
年金分割の種類
年金分割の方法は2種類あります。
合意分割 |
夫婦の合意または裁判手続きにより年金分割の割合を決定する方法です。 |
3号分割 |
婚姻期間中において、国民年金の第3号被保険者だった期間がある方は3号分割を請求できます。3号分割の場合、婚姻期間中における厚生年金保険の加入記録が自動的に半分ずつに分割されます。夫婦の合意や裁判手続きは不要です。 |
合意分割の進め方
まずは、「年金分割のための情報通知書」を入手しましょう。年金事務所に「年金分割のための情報提供請求書」を提出すれば、一週間ほどで送付されます。
通知書が手元に届いたら、通知書に記載されている情報を元に夫婦で協議を行い、年金分割の割合を合意しましょう。按分割合の上限は50%です。
協議で合意ができたなら、公正証書を作成しておきましょう。もし協議がまとまらない場合は、裁判手続きで決めることとなります。
分割割合が決まったら、年金事務所で合意分割の請求を行います。年金分割を受ける側が単独で請求可能です。
合意分割請求の必要書類は以下のとおりです。
- 標準報酬改定請求書(日本年金機構のホームページからダウンロード、または年金事務所の窓口で交付)
- 年金手帳または基礎年金番号通知書
- マイナンバーカードまたは個人番号通知カード
- 夫婦双方の戸籍謄本または戸籍抄本
- 住民票(事実婚関係にある期間の情報通知書等を請求する場合のみ)
- 年金分割の割合を明らかにすることができる書類(公正証書、調停調書謄本、審判書謄本および確定証明書など)
- 本人確認ができる書類(運転免許証など)
手続き後、2〜3週間ほどで標準報酬改定通知書という書類が夫婦双方に送付されます。
これには年金分割によって変わった年金記録が記載されています。
3号分割の進め方
3号分割は、夫婦の合意や裁判手続きを経ることなく、3号被保険者であった方が年金事務所へ単独で請求できます。
3号分割請求の必要書類は以下のとおりです。
- 標準報酬改定請求書(日本年金機構のホームページからダウンロード、または年金事務所の窓口で交付)
- 年金手帳または基礎年金番号通知書
- マイナンバーカードまたは個人番号通知カード
- 夫婦双方の戸籍謄本または戸籍抄本
- 住民票(事実婚関係にある期間の情報通知書等を請求する場合のみ)
- 本人確認ができる書類(運転免許証など)
手続き後、合意分割と同様に、2〜3週間ほどで標準報酬改定通知書が郵送されます。
未成年の子どもがいる場合
未成年の子どもがいる場合、親権者を夫婦のどちらにするのか、養育費はどうするのかを決めなければなりません。
親権者
未成年の子どもの親が離婚した場合は単独親権となるため、いずれか一方の親を親権者と定める必要があります。
親権者は、離婚協議・離婚調停・離婚裁判のいずれかの手続きによって決めます。
協議・調停による場合には、どちらの親を親権者とした方が子どもにとって良いかを中心に検討し、適切に親権者を定めましょう。
養育費
養育費は、夫婦の間に未成年の子どもがいる場合に、子どもを監護する親が、監護していない親に対して請求できる金銭です。
養育費の金額は、夫婦の収入バランスや子どもの人数・年齢に応じて決めるのが一般的です。
養育費についても、親権者やその他の離婚条件と同様に、離婚協議・離婚調停・離婚裁判のいずれかの手続きによって決めます。
まとめ
離婚後の戸籍、慰謝料、財産分与、年金分割など、離婚時には決めておくべき事柄があります。未成年の子供がいる場合は、親権者や養育費についての取り決めをしなければなりません。
どれもお互いの今後の生活に大きな影響を与える事柄です。後のトラブルを防ぐため、すべての必要事項を漏れなく取り決めましょう。
当記事を参考にして、着実に離婚の手続きを完了させてください。